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高次脳機能障害/遷延性意識障害

高次脳機能障害

1 高次脳機能障害とは 

高次脳機能障害は脳の障害です。
交通事故で、脳出血があった、頭部・顔部に強い衝撃を受けた、意識障害が続いたという方は要注意です。
高次脳機能障害とは、脳外傷(=脳損傷)によって引き起こされる、認知障害人格変化といった症状・障害をいいます。
脳外傷による高次脳機能障害の認知障害や人格変化には、次のような症状があります。
いわゆる認知症や脳卒中などの脳血管の病気の後遺症の症状をイメージするとわかりやすいと思います。
症状が軽度の方の場合ですと、発達障害とも似ています。

<認知障害の症状>

記憶・記銘力障害、注意・集中力障害、遂行機能障害(複数の物事を並行して処理できない、計画的な行動ができないなど)、判断力低下など

<人格変化>

感情が変わりやすい、不機嫌、攻撃性が強い、暴言・暴力、幼稚、羞恥心の低下、多弁、自発性・活動性の低下、被害妄想など

2 高次脳機能障害と併発しやすい障害

交通事故で高次脳機能障害となってしまう原因は脳外傷です。
脳は神経を伝達して様々な指令を出す部分ですから、その脳を損傷することで、高次脳機能障害の他にも障害を引き起こすことがあります。
交通事故で高次脳機能障害となってしまった場合、他にも障害が無いか、漏れなく診断してもらうことも重要です。
特に注意しなければならないのは、脳の損傷が重度あるいは広範囲であればあるほど下記のような障害を併発しやすくなりますが、脳の障害が重い場合、脳の治療が優先されて耳鼻科や眼科の受診が遅れてしまったり、患者本人の知能も低下しているため、本人がうまく自分の症状を説明できずに見過ごされてしまったりすることです。

<併発しやすい障害の例>

  • 眼の障害→複視、視野狭窄、視野欠損など
  • 聴覚障害→耳鳴り、難聴
  • 嗅覚障害→嗅覚脱失、減退
  • 味覚障害→味覚脱失、減退

3 高次脳機能障害と後遺障害認定のポイント 

自賠責保険では、高次脳機能障害を後遺障害認定するにあたっては、「受傷後の意識障害の有無・程度」、「脳の画像上の脳損傷の所見の有無・程度」、「高次脳機能障害の症状の有無・程度」の3つのポイントから判断します。
最初の2つのポイントは、脳外傷を負ったことが医学的に確かだといえるのかという観点から必要とされるものです。これは、病院での記録が重要になります。
3つめのポイント、すなわち「高次脳機能障害の症状の有無・程度」については、日常生活や学校生活、職場でどんな症状が現れているか、というのがとても重要になってきます。
しかし、高次脳機能障害は見過ごされやすい障害とも言われています。
これは、高次脳機能障害の特徴として、日常生活や仕事上の具体的な問題に直面するときに症状が現れやすいため、身の回りの世話をしてもらえる入院生活や短時間の問診の場面では気づきにくいという傾向があるためです。
家族ですら、交通事故で辛い体験をしたせいで、ちょっと一時的におかしくなっているだけかもしれない、と安易に考えていることもあります。
また、成長過程にあるお子さんの場合も未熟であるがゆえの一過性のものなのか、障害なのかが区別しにくいという面もあります。
後遺障害等級の適切な認定を受けるためにも、ご家族が的確に症状を把握している必要があります。

高次脳機能障害の症状に心当たりのある方やその可能性を医療機関で指摘された方は、早い段階で、高次脳機能障害に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。
当事務所の弁護士は、交通事故により高次脳機能障害となってしまった方の案件を多数扱った経験があります。
最初に自賠責保険で、後遺障害が非該当と判断された方でも異議申立てを行って高次脳機能障害が認定されたケースを経験したこともありますし、異議申立てで上位等級が認定されたケースの経験もあります。詳しくは解決事例をご覧ください。

遷延性意識障害

1 遷延性意識障害とは(定義・特徴)

遷延性意識障害とは,脳損傷に起因する障害で,重度の意識障害が継続している状態のことをいいます。いわゆる「植物状態」のことです。現在では「植物状態」という呼称は使われなくなり,「遷延性意識障害」という用語が使われています。日本脳外科学会では下記のように定義づけがなされています。

  • 自力移動不可能
  • 自力摂食不可能
  • 尿失禁状態にある
  • 声は出しても意味のある発語は不可能
  • 簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが,それ以上の意思の疎通が不可能
  • 眼球はかろうじて物を追っても認識はできない。

脳損傷を受けた後で上記六項目を満たすような状態に陥り,ほとんど改善がみられないまま満3か月以上経過したもの。

2 遷延性意識障害の後遺障害認定のポイント

遷延性意識障害の場合,自力では何もできない状態ですので,自賠責保険における後遺障害等級としては別表第一第1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの」に該当します。
自賠責保険では,主に主治医による後遺障害診断書や脳の画像など医学的資料から上記1の状態にあるかどうかの判断がなされます。
障害の状態としては重篤性が明白ですから,主治医において遷延性意識障害との診断がなされていれば,後遺障害の等級認定上疑義が生じるケースは少ないでしょう。

3 遷延性意識障害の損害賠償請求のポイント

遷延性意識障害の場合,通常1級の常時介護を要する状態と認定されますので,損害賠償請求の場面においては,将来介護費が請求できます。
交通事故により遷延性意識障害となってしまった被害者のご家族にとっては,被害者の介護は一生の問題です。経済的な負担も莫大なものとなります。
そのため,遷延性意識障害の方については,将来介護費について適正な賠償を得られるかどうかが最も重要なポイントとなります。
どのように算定されるかは,その被害者について将来施設介護を選択するのか,在宅での介護をするのかによっても変わりますし,在宅介護の場合,近親者が介護するのか,ヘルパーさんを雇うのかなどによっても変わります。
さらに,在宅介護の場合,介護体制を整えるために住宅改装費など大きな出費もかかります。
こうした将来必要となる費用について適切な資料を裁判所に提示できるかどうかで認められる賠償金の額が大きく変わってきます。
遷延性意識障害の場合,介護費以外の損害項目も高額になりますので,経験のある弁護士に依頼するかどうかで金額が大きく変わる可能性があります。是非ご相談ください。