【高次脳機能障害5級】近親者の付添看護費及び将来介護費が認められた事例
事案の概要
交通事故により5級の高次脳機能障害が残存したという被害者について、身体的な日常生活動作(ADL)は自立しているものの、高次脳機能障害の症状のため、夫による身の回りの世話や声かけが必要となった事案でした。
解決の内容
本件では、示談交渉を経ずに最初から民事訴訟を提起し、入院中の夫の看護の具体的な内容や症状固定後の夫の献身的な世話の状況、本人の高次脳機能障害の深刻さを丁寧に主張立証し、その結果、通常5級相当の後遺障害では認められづらい退院後~症状固定日までの付添看護費(日額3000円)や将来介護費(日額2000円)を認める内容で裁判所和解案が提案され、被害者及びご家族が十分納得できる内容で解決することができました。
ポイント
本件は、被害者本人及びご家族のお気持ちとして、裁判をしたいというお気持ちが強かったこと、また、被害者の過失が見込まれる事案でしたが、被害者側に人身傷害保険(訴訟することで被害者の過失を填補することができる保険)があったこと、5級で将来介護費の請求など話合での解決よりも訴訟の方が適していたことから最初から民事訴訟を選択しました。
通常、高次脳機能障害において将来介護費が認められるのは1、2級などの身体的な介助が必要となる場合や身体介助までは必要ないものの高次脳機能障害の症状の重いせいぜい3級相当(3級でも介護費が否定される例はあります。)まで、5級で介護費が認められる事例は極めて限定的です。
しかし、本件では、民事訴訟において、介護までは必要無いとする保険会社側の主張に対し、膨大な量の医療記録の一つ一つから被害者の症状の深刻さ、ご家族の献身的な看護の様子などを拾い上げて主張したことにより、当方の主張が全面的に認められる形での和解となりました。
示談交渉を選択していた場合には、保険会社は5級で将来介護費を認めることは無かったと思われますし、人身傷害保険により被害者の過失を満額填補することもできませんので、示談交渉か裁判かの選択により獲得する賠償金に大きな差が生じ得る事例でした。